どうも節約・投資担当の「つみたてにいさん(@tsumitate_nisan)」です((“Q(・ω・*)
投資信託だけではなく、個別株投資にも興味があるけど、株式投資における独特の用語(個人的に「株語」と名付けます。)がわからないという人は一定数おられるかと思います。
株を知るためには「株語」の習得が不可欠!!ということで分かりやすく用語を解説することを目的とした「株語講座」の第9回として「自社株買い」を紹介してみたいと思います。
「自社株買い」とは何か?
まずは「自社株買い」から解説していきましょう。
「自社株買い」とは「企業が自社の株式を企業自身で買い戻すこと」を言います。
前回の第8回「時価総額」にて出てきた「発行済株式(総)数」が関わる内容になります。
「自社株買い」(消却)は配当や株主優待と同じく代表的な株主還元の1つになります。
つまり基本的には「ポジティブなもの」と思っていただければ問題ないです。ただし「自社株買いの発表=買い」なのかと言うとそういうものでもありません。「自社株買い+消却」が揃って「ポジティブなもの」と思って貰えたら良いかもしれません。また購入割合(発行済株式数の何パーセント購入するのか?)も重要な要素になります。
それでは早速そんな「自社株買い」について深堀していきましょう。
「自社株買い」(消却)は「価値の向上」!
「自社株買い」を掴むための個人的なイメージとして「自社株買い(消却)=1株あたりの価値を高めるもの『価値の向上』」になります。(ただし消却に限る。)
さっきからちょいちょい見える「消却」とは何ぞということは一旦、頭の片隅に置いておいてください。後ほど説明します。
例えに入る前に、みなさんはポ〇モンでも遊〇王でもいいのですが、小さい頃トレーディングカードで遊んだ事はありますでしょうか。
自分は小学生や中学生の頃に友達と遊んでいたのですが、市場で販売されているカードゲームにはレアリティがあり、中にはとんでもない値段がついているカードも存在します。
そこで少し考えてみましょう。値段の高いカードあるのはなぜなのでしょうか。
答えは「人気のカードは欲しい人の数に対して、発行されている数が少ないから」ですね。
人気故に欲しい人に行き渡らないので「高い金額を払ってでも買いたい」という人が現れ、それがオークション形式で値段がつり上がっていきます。原理は株と同じですね。
さて、これも中には経験者もおられるかと思いますが、そのレアカードが再販されるとどうなるでしょう。市場に出回る数が増えるので「欲しい人に対するカードの枚数が増える」=手に入れやすくなる=カードの価値が下がってしまいます。これは株式投資で言うところの「増資」に近いものですね。(「増資」についてはまた別でお話するかもしれないので今回は割愛します。)
話が逸れてきたので本題に戻します。
さて本題です。今の話の逆のことが起こった場合、そのカードの価値はどうなるでしょうか。つまり、欲しい人が沢山いるカードのうち一定割合が処分されたとします。この場合のレアカードの価値はどうなるか?答えは上記の逆の状況、欲しい人に対するカードの枚数が減る=レアカードの価値が上がりますよね。
簡単に言うとこれと近いしいものが「自社株買い」(消却)の原理です。
それでは今度はちゃんと株式で具体例を見ていきましょう。以下のような会社(企業A社)の株があったとします。
【企業A社】
・純利益:1万円
・発行済株式数:100株
・1株当たりのEPS:100円
・PER:10倍
・株価:1000円(EPS100円×PER10倍)
・時価総額:10万円(EPS100円×PER10倍×株数100株)
図式化すると以下のような感じです。
少しイ〇バ物置みたいになりました(笑)
ちなみにEPSやPERがわからない場合は、過去の株語入門で解説しているので併せて確認してみてください(^^)
ここで【企業A社】が発行済株式数の50%(今回は50株)の「自社株買い」を行い、消却するとします。そうなると1株当たりのEPSはどうなるかと言うと以下のようになります。
【メリット1】EPSが上昇し、株価が上昇する
つまり株を持っている人は発行済株式数が減ったことで1株当たりの価値が2倍に高まる事になります。イメージするなら「100人で山分けするケーキが、50人で山分けすることになって1人当たりのケーキの大きさが2倍になる」みたいな感じですね。
また、このケースで言えば単純な話、株価も2倍になることになります。なぜなら自社株買いによって株の価値が2倍になった場合、PER10倍が妥当という判断をされている株であれば株価も同様に2倍の2000円まで上昇することになります。
EPS200円×PER10倍=株価:2000円
なお、ここまで大規模な「自社株買い」(消却)は普通はありえないのですが、例えば5%の自社株買いでも十分なインパクトがあります。この場合、1株当たりのEPSは105.2円になり、PER10倍が妥当とするならば株価は1052円まで上昇することとなります。(つまり株価も5.2%UPする!と想定できるということですね。)
【メリット2】資本効率が向上する
次に「自社株買い」を行うメリットとして「自己資本利益率(ROE)」が向上します。
具体的に企業の事例を見てみましょう。
【企業A社】
・純利益:1万円
・発行済株式数:100株
・1株当たりのEPS:100円
・PER:10倍
・株価:1000円(EPS100円×PER10倍)
・自己資本:10万円
・ROE(自己資本利益率)10%(純利益÷自己資本×100)
ここで先ほどと同様に、【企業A社】が発行済株式数の50%(今回は50株)の「自社株買い」を行い、消却するとします。そうすると以下のようになります。
【企業A社】
・純利益:1万円
・発行済株式数:100株→50株
・1株当たりのEPS:200円
・PER:10倍
・株価:2000円(EPS200円×PER10倍)
・自己資本:9.5万円(自社株買いで50株×100円=5000円減少)
・ROE(自己資本利益率)10.5%(純利益÷自己資本×100)
上記のように、自社株買いを行うとROE(=自己資本利益率)は向上します。
自社株買いの注意点
株主にとってメリットの大きい自社株買いですが、そうでもないケースや注意点が存在します。最後にそれらについてみていきましょう。
その1:必ず実行されるとは限らない
まず自社株買いは必ず実行されるとは限りません。
例えば日本特殊陶業(5334)は2022年2月1日〜2023年1月29日の間に最大650万株(自己株式を除く発行済み株式総数の3.19%)、100億円を上限に計画していた自社株買いですが、最終的に「取得は0」と発表しました。 理由として「持続的な成長の実現を目的とした他社との連携やM&A(合併・買収)などを検討した結果」と説明しています。
上記の事例が特別という訳ではありません。基本的に行われる事が前提ではありますが、このように自社株買いは必ず行われる訳ではない点は留意する必要があります。勿論、自社株買いが行われていなければ、株主還元がされていないという事になり株価上昇のきっかけとして機能しなくなります。株主としては発表された自社株買いはきちんと実行していただけるとありがたい限りですね。
その2:自社株買いの消却〇、処分△
次に自社株買いの種類です。今までの株主にとって歓迎される「自社株買い」は消却されることが前提になります。つまり「自社株買い」の処分では株主にとってメリットとならない「自社株買い」になります。
イメージとしては「自社株買い」の消却は遊〇王の漫画で例えると、買い場(仮)社長が世界に4枚しかない「レアカード」の内の1枚を破り捨てること(消却)によって、カードが世界に3枚しか存在しないこととなり「レアカード」の価値が向上するという感じです。
「自社株買い」の処分は「レアカード」は破られず倉庫などに保管されることで世界に4枚という枚数は変わらない。また再び市場に放出される可能性があるので「市場の枚数は変わらない=価値は変わらない」という感じですかね。(まぁ、買い場(仮)社長の場合、放出することなく独占して保有し続けているだろうことが予測できるので価値は上がっちゃうかもしれないのですが。)
まとめ
最後に今回の「自社株買い」のまとめになります。
- ・自社株買いには「消却」と「処分」の2種類がある
- ・「消却」は市場の枚数が減って株式の価値が高まる(嬉しい)
- ・「処分」は市場への再放出の可能性があるため価値は変わらない
- ・「自社株買い」(消却)は株主にとって魅力的な株主還元政策
- ・なお、「自社株買い」が行われない可能性がある点は留意
以上、今回は【株語入門】「自社株買い」についてという内容でした。少しでもみなさまの参考になれば幸いです。